台湾フルーツ
マンゴー
台湾は亜熱帯から熱帯にかけた地域に位置し、トロピカルフルーツの宝庫として知られています。日本への最初の輸出対象となったトロピカルフルーツはバナナで、その歴史は明治27年(1894年)にまで遡ります。台湾では多くの農業専門家が品種改良や研究に熱心に取り組んでおり、その成果はマンゴーをはじめとする様々な果実に受け継がれています。
台湾は南国でありながら四季が存在し、露地栽培が主流であるため、一年を通じて収穫できる果実は限られています。しかし、季節ごとに旬を迎える多彩なフルーツが楽しめるため、日本の消費者にも高い人気があります。ここでは、日本で特に評価されている台湾産フルーツの一例として、愛文マンゴー(アーウィン種)をご紹介します。
① 愛文マンゴー(アーウィン種)
台湾産マンゴーの中でも特に人気の高い品種が「愛文マンゴー」です。この品種は台湾で生産されるマンゴーのおよそ4割を占め、濃厚な甘さと豊富な果汁が特徴で、市場でも高く評価されています。
愛文マンゴーは、1950年代にアメリカ・フロリダ州から台湾へ伝わり、1960年代には台南市玉井地区で本格的な栽培が始まりました。その後、1970年代以降には沖縄県や宮崎県へと伝播し、日本国内でも栽培が広がりました。特に宮崎県産のアーウィン種は「太陽のたまご」としてブランド化され、高級マンゴーとしての地位を確立しています。
なお、同じ品種であっても台湾と日本では栽培環境に大きな違いがあります。台湾産の愛文マンゴーは露地栽培により太陽光をたっぷり浴び、自然の恵みを存分に受けながら育てられます。一方、宮崎県産はハウス栽培が主流で、温度や湿度を徹底管理しながら丁寧に育てられており、それぞれの環境の良さが活かされた美味しいマンゴーが生産されています。
パイナップル
台湾は、世界でも最も多くのパイナップル品種を有する国のひとつです。甘くて柔らかな果肉に、ジューシーさと程よい酸味が加わった台湾産パイナップルは、そのおいしさが世界トップクラスと評価されています。優れた品種と農家の高度な栽培管理技術に支えられ、輸出も堅調に推移しており、台湾の輸出果物の中でトップの座を占めています。
1970年代の最盛期には、台湾はハワイを凌駕し、パイナップル缶詰の輸出量で世界一となりました。しかし、缶詰生産の衰退を受け、1974年から農業試験所嘉義分所では、品種改良の目標を「生食用」に切り替えました。その成果として誕生した「台農17号」(通称:金鑚パイン)は、現在、台湾市場の約9割を占める主力品種となっています。甘く、果肉が柔らかく、果汁も豊富で、芯まで食べられるのが特長であり、1個あたりの可食率も非常に高い点が魅力です。
また、日本市場には、マンゴーパイン(台農23号)、ホワイトパイン(台農20号)、サトウキビパイン(台農13号)などが少量ながら輸出されています。現在、台農23号までの品種改良が進められており、今後も研究を重ね、より優れたパイナップルの開発に取り組む方針です。
ナツメ
棗(ナツメ)は、東洋や中国で漢方薬として利用され、広く栽培されている果樹です。かつて日本では、家庭でナツメを食べる習慣がありましたが、農業の衰退とともにその習慣は次第に廃れてしまいました。しかし、ナツメは栄養豊富なため、近年はスーパーフードのひとつとして注目されています。
世界的に見ると、生のまま食べるナツメの多くは、台湾で開発・品種改良されたものです。台湾では、インドナツメの主な栽培品種として「蜜棗(ミーザオ)」があり、その小粒で青リンゴに似た形状が特徴です。蜜棗の果肉は繊細でジューシー、上品な甘みと爽やかな香りが楽しめ、シャキシャキとした食感も魅力です。また、皮ごと食べられるため手軽に摂取でき、ビタミンCなどの栄養素も豊富に含まれています。
現在、蜜棗は台湾の高級フルーツのひとつとして人気が高く、贈答用にも重宝されています。さらに、台湾では冬のフルーツとして親しまれ、無病息災を願って旧正月(春節)に食べる習慣もあります。その艶やかな果皮がエメラルドのように輝くことから、「ラッキーフルーツ」とも呼ばれています。